ヤドカリの中身が丸見え! 驚きの生態を飼育員さんが伝授 自然界での習性を利用

「すさみ町立エビとカニの水族館」が展示する“クリスタルヤドカリ”【写真提供:すさみ町立エビとカニの水族館】

 ヤドカリの中身が丸見え! 驚きの生態を飼育員さんが伝授 自然界での習性を利用

愛らしいフォルムに加え、宿となる貝殻を飼い主好みに変えられることから、ペットしての人気も高まっているヤドカリ。海水浴や水辺の散策などでも目にする機会の多い生物ですが、貝殻の中身が一体どうなっているかすぐに思いつきますか? その実態を教えてくれる「すさみ町立エビとカニの水族館」(和歌山県西牟婁郡)のツイッター投稿が話題になっています。工夫が凝らされた展示やヤドカリの生態などについて、同館の本多正樹さんに話を伺いました。【動画】「すさみ町立エビとカニの水族館」が展示する“クリスタルヤドカリ” ツイッター投稿には「ヤドカリの観察が思いのまま!」の声が ◇ ◇ ◇

貝殻の中が一目瞭然 ツイッター投稿には「見られて良かった」と絶賛の声

「すさみ町立エビとカニの水族館」は、道の駅に併設された珍しい水族館です。紀伊半島近海に生息しているエビやカニなどの甲殻類を中心に約150種1000点を展示しています。 その中でも特に注目なのが、透明なガラス製の貝殻に体を収めている「イシダタミヤドカリ」です。体長は5センチほど。同館ではその見た目から、“クリスタルヤドカリ”という愛称で親しまれています。館内では約200匹のヤドカリが飼育されていますが、ガラス製の貝殻を宿にしているのはそのうちの2匹だけだといいます。 このヤドカリを側面から見ると、腹部がどのような状態で貝殻に収まっているか一目瞭然。巻き貝の殻に腹部をくるりと巻きつけることで体をうまく固定し、移動している様子が観察できます。 視認性が高いこの展示方法がツイッターで公開されると、19万件近い“いいね”を集める大きな反響を呼びました。さらに、「本当に貝殻を掴んで背負っているんだなってのがよく分かる」「これはすごい! ヤドカリの観察が思いのまま!」「どうなっているのか知りたかったことの一つです」「死ぬまでにこれが見られて良かった!」といったリプライ(返信)が寄せられています。

生き物に直接触れられる展示が人気 今後はマニアックな特別展も

では、話題のヤドカリは、どのようにしてガラス製の貝殻に住むようになったのでしょうか。 ヤドカリが自分の体の大きさに合った巻き貝の殻に住み着き、成長に合わせて“宿替え”つまり貝殻の“引っ越し”をすることは比較的知られていると思います。ヤドカリは貝殻が狭くなってくると、適当な貝殻を見つけて自身のハサミを使って大きさを計測。そして、ちょうどいい貝殻を見つけると、素早く古い貝殻を脱ぎ捨て、新しい貝殻に引っ越します。 飼育員の本多正樹さんによると、ガラス製の殻に入ってもらう方法はとてもシンプル。移ってほしいヤドカリと殻を一緒のケースに入れしばらく待つだけなのだそうです。「とにかく辛抱強く待ちます。とはいえ、なかなか移ってくれない時には、殻に振動を与えて出てきたところに新しい殻を差し出し、入ってもらうようにしています。自然界では2匹でぶつかり合って相手を殻から追い出す行動が観察されており、その習性を利用しています」 また、“宿替え”を繰り返すヤドカリですが、その成長方法は意外なことに、脱皮を繰り返すことなのだとか。脱皮は殻の中で行われています。「ちなみに、ヤドカリは殻の中でフンをします。腹部に腹肢(ふくし)と呼ばれるオール状の脚があり、出したフンはそれらを使って殻の外へ放出して処理します。フンをするためにわざわざ殻を脱ぐ必要はありません」 こうして来館者に一歩踏み込んだ展示を披露してくれる同館。一番の見どころを聞いたところ、本多さんは「タッチングプール」と教えてくれました。この展示では世界最大のカニ「タカアシガニ」や“生きた化石”と呼ばれる「カブトガニ」、人気の高い深海生物「オオグソクムシ」などにも直接触ることができます。 また今後は、かわいい名前とは対照的に、猛毒を持つことで知られる「スベスベマンジュウガニ」の特別展も開催予定。スベスベマンジュウガニだけを集め、“推し”の個体に投票をするマニアックな企画展です。 着ぐるみを着て解説してくれることもあるという本多さん。楽しい解説や工夫がいっぱいの同館で、海の生物に対する理解を深めたいですね。

Hint-Pot編集部