ろ過装置の基本と効率的な運用のポイントとは。焼結カートリッジ化技術でより速く、より効率的に

ろ過装置とは、固体を含む液体などの混合物を、ろ材を通過させて粒子の大きさ別に分離させる装置です。特に工業・産業用途では水槽や水道施設などでの水処理のほか、食品や薬品などの製造工程で利用されるなどあらゆる領域で活用されています。一方、ろ過装置をいかに選定し運用するかによって、ろ過効率や運用コストは大きく変動します。本記事では、ろ過装置の基本と、効率よくろ過を行うために押さえるべきポイント、効率的なろ過装置の運用を実現するカートリッジ化技術についてご紹介いたします。

ろ過装置とは液体や気体に固体が含まれている混合物を液体や気体から分離する装置

ろ過とは、液体や気体に固体が含まれている混合物を、細かい穴が開いた多孔質(ろ過材、ろ材)に通し、その粒子の大きな物質と液体、気体を分離する作業です。身近なものではコーヒーのフィルタやプール、浴室、水槽などで行われ、工業用では浄水といった環境分野や、化学品や医薬品、食品などの製造過程でも用いられています。とくに工業製品の製造現場では、ミクロ単位、ナノ単位の微細な粒子の分離が行われています。ろ過装置は、ろ過を行う装置のことを指し、固体を含む液体をろ過タンクに送り込み、ろ材を通過させることで粒子の大きな固体を分離させます。ろ過装置には大きく液体の吸水口、ポンプ、ろ材が設置されたろ過タンク、排水ポンプがあり、ろ過する対象物やろ過の手法により構造も異なります。

ろ過とろ過装置の種類

ろ過とろ過装置は、その手法や対象物によりいくつかの種類に分けられます。この章では、ろ過の種類をご紹介します。まず、どのようなろ材を使用して、どのような物質を除去するのかにより、以下の3つの種類に分けることができます。

<表1>ろ材とろ過対象物による種類

ろ過装置の基本と効率的な運用のポイントとは。焼結カートリッジ化技術でより速く、より効率的に

種 類ろ 材機 能
物理ろ過スポンジ、メンブランフィルタ、金属メッシュなど物理的なサイズ制限を設け障害物を除去
生物ろ過多孔質/リング状/ボール状/キューブ状ろ材などバクテリア等の働きにより有害物質を無害化
化学ろ過活性炭、活性アルミナ、ゼオライトなど化学吸着にて微量元素、低分子(臭気)などを除去

また、ろ過の手法によっても分類することができます。それぞれで用いられるろ過装置が異なり、例えば加圧ろ過ではろ過対象の液体を圧送したり、ろ過器の中に圧縮空気や窒素を送り込み液体上部から加圧したりする装置を用い、減圧ろ過では真空ポンプなどを用いてろ過後の液体(ろ液)側を減圧します。

<表2>ろ過の手法による種類

種 類原 理特 徴
自然ろ過(重力ろ過)液体の重力を利用簡素な構成。低粘度・固体量が少ないろ過に好適
加圧ろ過供給液側を高圧に保つ高粘度物質、多量沈殿物に有効
減圧/真空ろ過 (吸引ろ過)ろ液側を低圧(真空)に保つ差圧を大きくすることで高効率化
遠心ろ過 (限界ろ過)ろ過器の自転で生じる遠心力を利用差圧向上に好適。下水処理「デカンタ」など

ろ過対象物の特徴や性質により、最適なろ過手法、ろ過装置を選択することが必要となります。

効率的にろ過を行うためのポイント

ろ過の対象物により最適な手法と装置を選定するほか、ろ過装置を効率的に運用するためには以下のポイントが重要になります。 1. ろ過効率…ろ過対象の液体からどの程度の混合物が分離されたか 2. 流量…一定時間の間に、ろ材をどの程度の液体が通過したか 3. ろ過寿命…ろ過した混合物により、所定の流量が流れなくなるまで、あるいは一定の圧力損失*が生じるまでの時間*圧力損失:ろ材の前後の圧力の差効率を上げるためには、加圧・減圧などろ過手法を工夫することに加え、ろ過効率がよく耐久性に優れたろ材を使用することも重要です。ろ材の形状には、ろ紙やろ布、キューブ状に成型されたものなどがありますが、なかでもカートリッジフィルタは取り扱いやすく広く使われています。カートリッジフィルタには、比較的大きな物質を取り除くためろ紙やろ布を巻き付けたものや、メンブレンフィルタなどを用いさらに細かい物質を取り除くためのもの、さらに活性炭やゼオライトなどをカートリッジ化し化学吸着を行うものなどがあり、用途に応じ使い分けます。カートリッジフィルタを導入する際には、用途やニーズに応じた機能を備えていることに加え、上記のろ過装置の運用のポイントを押さえていることが求められます。そのような高機能なカートリッジフィルタの製造には高度なカートリッジ化技術や使用する素材に対する知識を備えていることが必要です。

ろ過の効率を高める焼結フィルタカートリッジ技術

最近では、ろ過効率とろ材の耐久性を向上させるカートリッジ型の焼結フィルタも登場しています。焼結フィルタは、樹脂粉末や金属粉粒体を焼結させることで多孔体を形成、ろ材として活用されています。

1.耐久性が高い。また、使用する素材によって耐食性も高められる2.気孔径がコントロールでき、ろ過の精度を調整することができる3.焼結金属では、耐熱性・耐寒性が高く、幅広い環境下での利用が可能

樹脂を焼結し多孔質を形成し、そこに活性炭などのろ過効果のある機能性粉末を内包させることで、あらゆるろ過のニーズに応えながら、高いろ過効率を実現する製品も登場しています。味の素ファインテクノ株式会社が開発した「吸着焼結カートリッジ AFTRIDGE(R)」は、さまざまな機能性粉末(活性炭やゼオライトなど)を内包することで、あらゆるニーズや用途に対応することのできるカートリッジフィルタです。ミクロンサイズの粒子を利用することで除去対象の物質を速い速度で吸着でき、圧力損失も低減することが期待されます。同社は、多様な種類の活性炭、吸着樹脂、キレート樹脂を取り揃えており、特に工場などの排ガスや排水から水銀を取り除く「MAシリーズ」やガス中のアルデヒドを取り除く「アルデオ(R)」などユニークな素材を取り扱う化学メーカーです。同社活性炭事業部では単純なろ過という機能だけでなく、必要なものと不要な物を分ける選択的吸着能を用いた分離、精製という機能も活かすなど様々なニーズに対応しています。

特徴① 吸着速度向上と圧力損失低減で高効率を実現内包する粉末粒子はミクロンサイズのため、非常に速い拡散速度が期待できます。これまでは粒子の大きさを小さくすると圧力損失の上昇を招いてしまうため、粉末粒子の使用はあきらめられていました。しかし、特許(参考情報1)を取得した焼結技術により一定空間内に粉末粒子を内包することで、空間内を粒子が自由に動き回ることを実現、粉末粒子の機能性を損なわず圧力損失の低減を可能にしました。

特徴② あらゆるニーズに応える設計が可能独自の焼結技術により、点と点で特殊なバインダ樹脂を結合させかご状に成型、一定空間内に機能性粒子を内包することで実現します。従来の活性炭を使用したカートリッジフィルタでは、内包している活性炭がヤシ殻活性炭、または繊維状活性炭に限定されているため、物質を吸着する細孔の大きさが限られ、ニーズにあわせた設計が叶わないケースもありました。しかし、吸着焼結カートリッジ AFTRIDGE(R)では、一般的なカートリッジフィルタに比べ導入できる粒子サイズに制約が少なく、様々なタイプの粉末活性炭が適用できます。例えば、薬品によって賦活されたおが屑を材料とする活性炭は大きな細孔を持つため大きな分子の吸着が求められる脱色に、ヤシ殻を材料とする活性炭は小さな細孔を持つため小さい分子の吸着が求められ脱臭に向いています。

吸着焼結カートリッジAFTRIDGE(R)を導入することで、さらに以下のようなメリットが得られます。 ・カートリッジタイプのため、簡単にセット・交換が可能 ・付帯設備の規模が小さく、コストダウンが期待できる ・粒状、粉末状と異なり粉塵が発生しないため作業環境を清潔に保てる、汚染リスクが低いまた、吸着焼結カートリッジ AFTRIDGE(R)のもうひとつの特徴として、形を一定自由にカスタマイズすることができることも挙げられます。一般流通しているハウジングの大きさに合わせ10インチサイズのカートリッジは焼結加工をしていますが、焼結の際の金属金型を用意することである程度大きさに自由度を持たせることができます。これにより、サイズの問題でカートリッジフィルタによる吸着除去を諦めていた作業現場に導入できるようになるほか、これまでに吸着材を使用してきていなかった現場にも導入することで新しい商品開発の可能性が開くことも考えられます。

まとめ

私たちの身の回りや、工業・産業分野でも広く行われるろ過と、そこで使用されるろ過装置は、用途や対象物によりさまざまな種類が存在します。そして、ろ過装置を運用していく際には、用途に合わせた選定のほか、運用効率も重要で、カートリッジフィルタは運用コストの面からも広く採用されています。味の素ファインテクノが開発した吸着焼結カートリッジ AFTRIDGE(R)は、高いろ過効率を維持しながらあらゆるニーズに応えることができ、今後さまざまな分野での活用に期待されます。吸着焼結カートリッジ AFTRIDGE(R)、特許取得の焼結技術に興味を持たれた方は、お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。参考情報・参考情報1:「国際特許番号WO 2020/116491」の特許権者は「味の素株式会社、日本フイルコン株式会社」、発明の名称は「吸着用焼結体及びその製造方法並びに吸着装置」です。・AFTRIDGEは、味の素株式会社の登録商標です。・アルデオは、味の素株式会社の登録商標です。